コロナ禍:エアロゾル感染への対応

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各地で最大感染者数を記録して、コロナ禍第三派を呈してきました。
建物の換気設備を話題としましょう。
家庭用の一般換気扇(羽根が見えるタイプ)の排気能力は25cm径で900m3/h程度で、天井高3mHとして、100m2の部屋では、3回/1時間当たりとなります。今のマスコミ表現では「20分に1回換気」となります。
ある密閉空間の空気量が一部排出されれば、その空間は減圧されます。工場や病院のクリーンルームでは、ファン等の換気設備を用い、給気先には加圧状態、排気元は減圧状態を作り、開放通過場所があればそこを伝って加圧部から減圧部へ流れるので、空気の一方向流れを作り、空気中に浮遊する塵埃やウィルス・細菌を寄せ付けない施設とするわけです。空気を水に置き換えて、川の滝や堰をイメージすればわかりやすいでしょう。
このような建物では密閉度を高めて造られますが、家庭用等通常の建物では、窓サッシやドアから空気が漏れるので、一部の部屋の換気扇で排気が稼働すれば、巡り巡ってどこかから外気が入り込んでくれます。マイナス表現では隙間風ですが、1か所の排気に対し様々なところから起きるので、1か所あたりは少量細流となり、これから寒くなる冬季、換気のため窓開けするより排気用に換気扇を稼働させる方が穏やかに実現できます。また、外気から玄関、廊下と通過するうちに面する躯体部の熱(蓄熱)を吸収するので、流入外気はいくばくかは昇温し、その後の居室部に流れた際には、緩和された空気の流入という効果になります。換気のため窓開けして寒くなって直ぐ締めるよりは、実質的にも有効です。実践しましょう。
 さて、今日の本題は、
 先日、TV放送のコロナ関連の番組で、司会者が「このテレビスタジオの換気はどうなっているの?窓が一つも無いよ!」と語ったが、居合わせた感染の専門家たちは無言でした。医者に建築のことを聞いてはだめですよね。それぞれの専門を逸脱した番組を作らないでほしいですね。近年のジャーナリズム力の低下を感じます。
 その説明をしましょう。
 現在の業務用建物はその多くが「はめ殺し窓(業界用語)」が採用され、窓開けの自然換気ができません。そのため効率の面からもファンによる機械換気が多用されています。
 空調機は、一部外気が吸入する構造になっていて常時換気が行われています。一般に、この外気吸入方法は自立式ではなく、先に説明したような受動式によるもので、主にトイレや給湯室排気による減圧が利用されています。
「トイレ排気(減圧)->空調居室部(減圧)->空調機(室内還気分の減少)->外気側ダクト内の減圧->(外気ダクト部気圧<外気気圧)のため外気が流入」の動きとなるのです。
 よって、省エネ策で、よくトイレ排気が止められていましたが、これは駄策!誤った対策です。
 取り入れるべき外気量の基準値は、オフィスでは、建築基準法により計画居室員あたり20m3/h以上と決められています。オフィス計画では1人当たり5m2~10m2なので、天井高3mHとすると、2/3~4/3回/h(90分~45分に1回の換気)です。取り入れられる新鮮外気量はあまり多くなく、立派なビルも実は薄ら寒い環境なのです。(この時期、在宅勤務に努めましょう)
 では、密室のイメージが強く結構忌避された劇場・ホールについてはどうでしょう。建築基準法ではなく地方条例で「必要外気量=75m3/m2h(ただし空調使用の場合1/3で良い)」と定められており、平均天井高5mHとすると、5回/h(12分に1回の換気)となり、これは優れた環境にあるといえます。今春、小さな劇場(とは言えない)でクラスターが発生し、悪いイメージがありますが、しっかりした劇場・ホールでは、安心して利用して良い(設計・施工・管理の誠実さを信じて)と思います。そう評価しつつ、私は映画ファンですが、長時間滞在でもあり、見たい出し物がないためまだ利用はしていませんけどね。
 次は、飲食店です。実体験からイメージできるように、小さな飲食店では、小さな厨房に収まっているフード内に家庭用クラスの換気扇1個の排気のみのような状況ですが、天井高3mHで床面積を100m2とすると3回/1時間当たりで「20分に1回換気」です。1人当たりの専有面積を2~4m2として、25~50人の在席で20~40m3/h人となり、まずまずの環境でしょうか。
しかし、1か所排気で入り口1か所からの流入では空気の流れに偏りが大きく均等ではないため、店内の場所選びが肝要でしょうね。
 大きなレストランでは空調設備もしっかり備えられ、室内は均質な空気流と法規に則った厨房排気(厨房空間の換気回数:30~60回/h)が行われているはずなので、比較的安心して利用できるかと思います。(私は、外食する場合、都会が多いので、大きなビルのレストランフロアを利用するよう心がけています。)
 さて、一時、空気感染・エアロゾル感染の可能性について情報が出ましたが、今は意識されてか否かは不明ですが、これらの情報はほぼ出されていないようです。(エアロゾル感染の可能性が高くなると飲食業界は壊滅状態になるから?)
 しかし、感染の高度知識を持ち、あれだけ対策をしっかり取っている病院の、クラスター発生を考えると、部分的ではあっても、空気感染・エアロゾル感染の可能性は否定するべきではないと思います。意識し、自身で防御する工夫を取りましょう。
 サイエンス・テクノロジーは必ず後追いです。ある事象が起き、そのデータを基に仮説が立てられ、実証して修正を繰り返して本説となる。今後もコロナについては様々な可能性が説かれることでしょう。現時点で最新の情報を仕入れつつ、自身の考えで行動するしかないということです。
 休日の外出時、イベント参加や外食の機会があるでしょう。建築物へ入る場合には、以上の知識を頭の片隅に。

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